≪短編≫群青
「ただいまー!」
玄関先からばたばたと足音が聞こえたと思ったら、バンッと寝室のドアが開いた。
息を切らしながら、ママが、
「綾菜ちゃん、大丈夫?!」
と、駆け込んでくる。
驚いた私は、思わず食べ掛けだったサンドイッチを口からこぼしそうになった。
「ママね、やっぱり綾菜ちゃんのことが心配で、朝一番の新幹線で戻ってきたの」
「あぁ、そうなんだ。でも、もう大丈夫だよ。一応、学校は休むことにしたけど、熱も引いたし。それに、大雅もいてくれたから」
私の言葉に、ママの目は大雅へと向けられる。
「ごめんねぇ、大雅くん。昨日、いきなり電話しちゃって。でも、ママ、ほんとに綾菜ちゃんが心配で」
「いいよ、別に。それに俺も綾菜のこと心配だったし」
どうしてこいつは、ママの前だとさらりとこういうことを言えちゃうのか。
さっきまで下品なことを言ってたくせにと思うと、少しばかり腹立たしかったのだが。
しかし、ママは目を輝かせ、
「愛ね、大雅くん」
と、大きな身振りと手振りで感動に浸ったように言った。
大雅は不思議そうに眉根を寄せ、
「愛?」
「そうよ。大雅くんが綾菜ちゃんを想う気持ち、愛でしょ。素敵じゃないの」
「………」
「あーあ、ふたりとも、早く高校卒業して結婚しちゃえばいいのにぃ」
何の話だ。
飛躍しすぎてついていけないママの言葉に、私はこめかみを押さえて息を吐く。
大雅はそれには答えず、物憂い顔で煙草の煙を吐き出した。
玄関先からばたばたと足音が聞こえたと思ったら、バンッと寝室のドアが開いた。
息を切らしながら、ママが、
「綾菜ちゃん、大丈夫?!」
と、駆け込んでくる。
驚いた私は、思わず食べ掛けだったサンドイッチを口からこぼしそうになった。
「ママね、やっぱり綾菜ちゃんのことが心配で、朝一番の新幹線で戻ってきたの」
「あぁ、そうなんだ。でも、もう大丈夫だよ。一応、学校は休むことにしたけど、熱も引いたし。それに、大雅もいてくれたから」
私の言葉に、ママの目は大雅へと向けられる。
「ごめんねぇ、大雅くん。昨日、いきなり電話しちゃって。でも、ママ、ほんとに綾菜ちゃんが心配で」
「いいよ、別に。それに俺も綾菜のこと心配だったし」
どうしてこいつは、ママの前だとさらりとこういうことを言えちゃうのか。
さっきまで下品なことを言ってたくせにと思うと、少しばかり腹立たしかったのだが。
しかし、ママは目を輝かせ、
「愛ね、大雅くん」
と、大きな身振りと手振りで感動に浸ったように言った。
大雅は不思議そうに眉根を寄せ、
「愛?」
「そうよ。大雅くんが綾菜ちゃんを想う気持ち、愛でしょ。素敵じゃないの」
「………」
「あーあ、ふたりとも、早く高校卒業して結婚しちゃえばいいのにぃ」
何の話だ。
飛躍しすぎてついていけないママの言葉に、私はこめかみを押さえて息を吐く。
大雅はそれには答えず、物憂い顔で煙草の煙を吐き出した。