≪短編≫群青


付き合いたてのカップルが同じ教室内にいるというのは、確かにかなりうざかった。

にやにや、ひそひそ、目が合う度にイチャついている萌と園山くんを見て、病み上がりの私はまた熱がぶり返しそうだった。


なのに、今日はさっさと帰ろうとしていたホームルームで、担任から「委員会があるから出席するように」と言われてしまった。


そういえば、私、4月にじゃんけんに負けて保健委員になってしまったんだっけ。

今の今まで忘れていたが、熱血担任が欠席を許可してくれるはずもなく、私は半泣き状態で委員会の集まりに出席する羽目になった。




保健委員が集まる教室で、2年D組の席に座り、頬杖をつく。

ひとり、またひとりと、同じ委員会のメンバーなのだろう人が、自分のクラスの席に座っていくのを眺めながら、



「だるー……」


思わず声に出てしまった。

すると、いきなり、私の目の前に座っていた男がこちらに振り向き、



「ね。マジでめんどくさいよね」


と、話しかけてきた。

突然のことに驚いていた私に彼は、



「あ、俺、市井。市井 和弘。よろしくね」


私の前の席ということは、この市井くんとやらは、2年C組ということになる。

ぼうっと、そんなどうでもいいことを考える私。



「えっと……」

「知ってる。長谷川さんでしょ? 去年、A組だったでしょ」

「………」

「俺のこと知らない? 俺、去年、わりとA組に行ってたんだけど。あ、長谷川さんのこともその時に知ったんだけどさ」


早口で、よく喋る人。

そのテンポについていけず、私は曖昧にしか笑えない。
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