≪短編≫群青
「あ、D組ってことは、田口とか岩崎とか一緒じゃない? 俺、部活一緒なんだよね」

「………」

「あと誰がいるかな。あ、三上さんとかもいるでしょ。中学一緒だったんだ。四中だったんだけど」


心底どうでもいい。

でも、そうとも言えないまま、私は「ははっ」と返す。


すると、はっとしたように、市井くんは、



「って、ごめんね。俺ばっか喋ってるよね。何か変にテンション上がっちゃって」


と、申し訳なさそうに頬を掻いた。



きっと、思ったことが全部言葉になってしまう人なのだろう。

大雅とは真逆のわかりやすさに、私は今度は本気で笑ってしまった。


が、笑われた市井くんは真っ赤になり、



「な、何で笑うの」


と、声を上げる。

それもまたおもしろくて、私は笑いを引きずりながら、



「ごめん。ちょっと会話の中の情報量の多さに驚いて。忙しい人だなぁ、とか、色んな人の名前が出てきたなぁ、って思ったら、今になって可笑しくなってきて」


私の笑いの理由に、市井くんは肩を落とす。



「何か俺、すごい恥ずかしい人みたいだよね」

「そんなことないよ。私あんまり一気に色んなこと考えられないタイプだから、すごいと思うけどなぁ」


そんな話をしていたら、「保健委員会を始めるぞー」と、教室に先生が入ってきた。

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