≪短編≫群青


どうでもいい内容で無駄に長かった委員会が終わり、私は息をついた。

各自、「疲れたー」などと言いながら教室を出ていくのを横目に、私ももらったプリントをバッグにしまい、さて、帰ろうかと席を立った時、



「長谷川さん!」


振り向いた市井くんに呼び止められる。



「あのっ!」

「うん?」

「えっと、ちょっと話したいことっていうか、聞いてほしいことがあって」


市井くんは改まったように言葉を探す。

私が首をかしげながら「何?」と返すと、少しの沈黙の後、市井くんは意を決したような顔を上げた。



「あのさ、実は俺、前から長谷川さんのこと気になってて」

「……え?」

「いや、だからその……」

「………」

「同じ委員会になれたのが奇跡だと思ってさっき勇気出して話しかけてみたら笑ってくれて嬉しくなって、だからもっと仲よくなりたいっていうか、とりあえず俺のこと知ってほしいっていうか」


ぽかんとする私。

でも、もしかしてこれは、



「す、好きなんだ」


力いっぱいの告白だった。

が、市井くんは自分で言って自分で取り繕うようにさらに早口になり、



「あ、いきなりこんなこと言われても困るよね。今日初めて話したもんね。だから別にすぐに答えがほしいとかじゃないんだ。でも何か気持ちだけは知っててもらいたかったっていうか」

「………」

「長谷川さん、今、カレシいないって聞いた。だから今週の土曜とか、あ、別に日曜でもいつでもいいんだけど、俺と遊んだりしてからでいいから考えてほしいっていうか」
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