≪短編≫群青
大雅はそういう感情を、理解する気もないというような言い方をする。

それが少し悲しかった。



「大雅はやっぱり誰とも恋愛する気ない?」

「ねぇよ。俺はずっとこのまま。何度も言わせんな」


「そんなことより」と、大雅は私の腕を掴んだ。

大きくて、熱を帯びた、大雅の手。



「花火しに行こうぜ。せっかく買ったんだし」


顔が近い。

私のことを好きになるつもりがないなら、どうしてこう優しくするのか。



「何? あ、もしかしてヤリたい?」


にやりとし、目を細めた大雅の唇が近付く。

が、



「……綾菜?」


体だけの関係。

でも、私は自分の感情に気付いてしまったから。


だから、『ずっとこのまま』は、もう無理だ。



「離して」

「あ?」

「手、離して」

「何で」


腕を掴む大雅の手の力が強くなる。

私はたまらず目を逸らした。



「大雅のことが好きなの」
< 44 / 61 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop