≪短編≫群青
あれから3日。
本格的にテスト期間に突入したこともあり、私は勉強に集中しようと努めた。
けれど、大雅と過ごした日のことを、今まで以上に断続的に思い出してしまって。
大雅が最後の日にくれたガリガリ君は、まだ手を付けることができずに我が家の冷凍庫に眠ったままだ。
「つーか、大雅のやつ、ほんと学校来ねぇよなぁ。テストどうするつもりなんだろうな」
「あぁ、何か今あいつ親と色々あるんだって」
「だからってテストは別じゃね?」
「俺に言われてもなぁ。電話にも出ねぇんだもん。どうしようもねぇじゃん」
教室の隅から聞こえてくる、色とりどりの頭の軍団の会話。
聞いてしまえば私だって心配になる。
でももう、私が何か言える立場でもないから、ただもどかしいだけ。
「ねぇ、綾菜ちゃん」
はっとして顔を上げると、ちっとも勉強する気のない萌は、ペンをくるくるとまわしながら、
「あれからどうなったのー?」
「何が?」
「イッチーくんとのことでしょ」
「あぁ」
「メールとかしてんの?」
「まぁ、一応?」
「『一応』って……」
「だって、テスト期間中だし。私今回ちょっとやばいからさぁ」
「じゃあ、テスト終わったら、ふたりで遊びに行ったりするとか?」
「あー……」
確かに市井くんからも、そんな感じの内容のメールをもらったけど。
でも、大雅への気持ちの整理がついていない状態では相手に悪い気がして、はぐらかしたままだ。