≪短編≫群青
「すごい荒れてたね。何かあったのかなぁ?」
「さぁ?」
「前から目つきとかは怖かったけど、あんなんじゃなかったよね。私、桐原くんがあそこまで大声でキレてるの、初めて見た」
萌はまるでテレビの中の出来事のような感想を述べる。
でも、確かに私も同意見だった。
大雅は今までいくら機嫌が悪くても、あんな風に怒鳴ったりはしなかった。
「桐原くん、謹慎かなぁ?」
「さぁ?」
「テスト受けられないのなかなぁ? そうなっちゃうと留年じゃない?」
「そうかもねぇ」
せっかく、考えないようにしてるのに。
なのに、あんたがそんな風でどうするのよ。
今でも心配ばかりしている私は馬鹿みたいじゃない。
「長谷川さん!」
呼ばれて顔を向けると、市井くんが。
「さっきの、すごかったね。長谷川さんのクラスのやつでしょ? 関わりたくないよね。近付くだけで襲われそうだし」
また、ふとあの熱帯夜の日を思い出す。
私はそれを記憶の奥底に追いやり、
「市井くん。テスト終わったら、ふたりでどこか遊びに行こうか」
笑顔を向けると、市井くんは目を丸くして、「行こう!」と言った。
臆病になって尻込みしたままでは、前には進めない。
私はもう、早く大雅を忘れるべきだと思ったから。
「さぁ?」
「前から目つきとかは怖かったけど、あんなんじゃなかったよね。私、桐原くんがあそこまで大声でキレてるの、初めて見た」
萌はまるでテレビの中の出来事のような感想を述べる。
でも、確かに私も同意見だった。
大雅は今までいくら機嫌が悪くても、あんな風に怒鳴ったりはしなかった。
「桐原くん、謹慎かなぁ?」
「さぁ?」
「テスト受けられないのなかなぁ? そうなっちゃうと留年じゃない?」
「そうかもねぇ」
せっかく、考えないようにしてるのに。
なのに、あんたがそんな風でどうするのよ。
今でも心配ばかりしている私は馬鹿みたいじゃない。
「長谷川さん!」
呼ばれて顔を向けると、市井くんが。
「さっきの、すごかったね。長谷川さんのクラスのやつでしょ? 関わりたくないよね。近付くだけで襲われそうだし」
また、ふとあの熱帯夜の日を思い出す。
私はそれを記憶の奥底に追いやり、
「市井くん。テスト終わったら、ふたりでどこか遊びに行こうか」
笑顔を向けると、市井くんは目を丸くして、「行こう!」と言った。
臆病になって尻込みしたままでは、前には進めない。
私はもう、早く大雅を忘れるべきだと思ったから。