≪短編≫群青


市井くんと観た映画は、エイリアンに襲われて地球が滅亡するかもしれないとかいう、よくあるハリウッドの超大作。

正直、私の好みではなかったが、市井くんが満足そうだったから、それでいいと思った。




映画館を出たら、ちょうど昼時だったので、ふたりでカフェに入った。


市井くんは、まだ興奮が冷めやらないのか、先ほど観た映画について、あれこれと嬉しそうに感想を言い続ける。

私はそれを、相槌を打ちながら聞いていた。




それから、市井くんの部活の話も聞いた。



去年は試合に出られなかったけど、今年はレギュラーになれたこと。

早起きしてランニングをしてから、学校の朝練に向かうこと。


私が「すごいね」と言ったら、市井くんは「バスケが好きだから」と笑った。






傍から見たら、私たちは仲のいいカップルなのだろうか。


付き合うって何だろう。

たかが口約束なのにと思うと、何だか無性に悲しくなった。



大雅と私の間には、そんなものすら存在していなかったから。




カフェを出てからは、ふたりで街をぶらついた。

市井くんのお気に入りのアクセサリーショップに入ってみたり、途中の店でジェラートを買って分け合ったり。


まるで絵に描いたようなデート。


でも、楽しいと思う反面、いつも心のどこかで虚しさがくすぶったまま。

大雅のことを考えたくなくて市井くんと遊ぼうと思ったはずなのに、なのにどうしてこんな気持ちにさせられるのか。

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