吸血鬼の翼
突然の来訪者
朝が来た。
いつもと変わらない日常が…。だけど…、私にとって、もう普通の毎日はない。
イルトがいるからだ。
でも、嫌じゃないし、美月は彼の存在を無意識に必要としていたと思う。
ツマらない日常から、反吐が出るような毎日から救ってくれているような気がした…というより実際そうなのだ。
美月は今、学校にいる。
授業を受けて、友達と他愛ない会話をしている。
だけど、何処か…心の奥で虚無感を感じる時がある。
それは何時もと一緒なのだ。
そんな事をしている内に最終のチャイムが鳴り、校門を出て友達と別れると美月は真っ直ぐ帰路に向かった。
「…イルト、大丈夫かなぁ。」
そう言葉にしながら、溜め息をついた。
“あの後”イルトに部屋から出ないように言ってあるから大丈夫だけど…彼自身の事が気掛かりだ。
酷く打ち拉がれた面持ちだった。
きっと悪夢を見たんだろう。
それに“ルイノ”が関係あるのは間違いないと思う。
その言葉を告げて泣いていたのだから…。
美月は1人、悶々と考えながらトボトボと歩いていた。
やがて、公園の前まで来ると何かの着地する様な地面の擦れる音が耳に入ってきた。