吸血鬼の翼
あれから数日が経った。
私は相変わらず、退屈な日常を持て余しながら、日々を送っている。
どうやら、母はイルトやラゼキが居た事等、覚えていない様子だ。
恐らく、家を出る時にラゼキが記憶を消して行ったのだろう。
私が2人の事を話した時は疲れてるんじゃないのと母から心配されてしまったのだから。
何で、私の記憶は残してくれたのかな?
あの時、消される事を拒んだからかな。
苦い記憶まで思い出すと悲しくなって頭の隅に追いやった。
そして美月はいつもと変わらない朝を迎える。
学校へ行く支度をして、鏡を見ながら襟元のリボンをしっかり結ぶ。
そういえば、今日から冬服調整に入るんだっけと思いながらブレザーを袖に通す。
「よし、弁当入れた!」
鞄の中身を確認すると手に持ち、家を後にした。
今日は学校が終わったら、千秋と遊びに行く予定だ。
それを待ち遠しく思いながら、美月は学校へ緩やかに歩を進める。
その後ろ姿を鋭い水色の瞳で見ていた人物に気付かずに―。