吸血鬼の翼
それから、瞬く間に疑心暗鬼に陥った2つの種族は互いに恐れる様になり、国が分離してしまいました。
やがては、戦争をするまでになってしまいます。
友好的だった時代を捨て、それを歴史から消すくらい―――世界は歪んでいったのです。
そんな中、教皇の一族はひっそりと子孫へ昔の時代を語り継いでいきます。
――2つの種族はとても、仲が良かったのだと。
勿論、それだけでは、どうにもならないと分かっていた教皇はそんな世界に立ち向かう為、聖女という存在を自分達で探し出す事を決意するのです。
聖女とは古(いにしえ)より、語り継がれて来た伝説の少女。
世界が危機に曝(さら)された時に異世界から現れ、民を救う救世主とも言われている絶対的存在。
聖女を見極める目を持つ、この教皇の一族なら、きっと見つけられると信じたのです。
今がその時だと思った教皇は秘密裏に動き出します。
異世界に存在する聖女を探し出し、覚醒させる事を――
それには、まず自ら次元を渡るしかありません。
しかし、次元を越える事は禁魔術であるだけリスクは高く、成功に至る事が極めて少ない気の遠くなる話でした。
やがて、数百年の歳月が経ち、諦めかけていた時、やっと異世界を繋ぐ魔術に成功した1人の司祭がいました。
しかし、時既に遅く――その司祭の体は衰え、異世界へ行ったきり、遂にはキュルアスへ帰って来る事はありませんでした。
それを知っていた次の継承者は禁魔術を何とか会得し、聖女を探し出す事を誓ったのです。