吸血鬼の翼



翌日の朝、目が覚めると寝間着のままで部屋を出てテレビのある場所へ向かう。
そして、リビングにあるソファに腰掛けた。
リモコンで目の前のテレビをつければ映像が浮かび上がる。

ニュースを見ると千秋の言ってた通り、数人の失踪事件が相継いで起こっていた。
いずれも被害者は皆、女子高生ばかりだ。

誘拐や家出ではないかとされているが、何一つとして証拠が出てない状況らしい。

美月は事件の共通点を改めて考える。
何故、女子高生ばかりが失踪するのだろう?

「…訳分からない」

それでも、違和感がある妙な事件だ

気分が悪くなって、まだニュースの続いているテレビの電源を消してソファに倒れ込んだ。

「思い過ごしだといいけど………」

美月の声はリビングへ寂しく消えていく。
家の中は静まり返って少しの音でも耳に入って来そうだ。

今日は休日だというのに母は出勤で家には美月、1人だ。
ご飯を適当に食べ終えた美月は階段を駆け上がり、部屋へ入った。

クローゼットから私服を出して着替える途中、時計の秒針の動く音が厭に耳に響く。

カチカチカチ…

まるで、責められている気がした美月は時計がある壁の反対側を向く。

責められるって何を?

何だろう、この感じ…嫌だな……
自分でもよく分からない気持ちから考える事を拒絶する。
なるべく、他の方に思考を向ける様にして着替えが終わると直ぐに部屋を飛び出した。

まだ続く動悸に戸惑いながら、頭を冷やそうと外へ出る。

すると風が強く、寒くて思わず身震いする。

今、着ている私服は白のブラウスにデニムパンツ、上着にはニットアウターを着ていた。

こんなに気温が低いならもう少し厚着して来れば良かったなと美月は少し後悔した。

かといって、今あの部屋には入りたくない。
多少の寒さなら、我慢しようと意気込んでみせた。



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