吸血鬼の翼
と思いつつ、気合いを入れた所で寒いものは寒い。
冷たい風を受けながら、歩いていると商店街が目に入ってきた。
そういえば、千秋は今日は用事があるんだっけ。
他に簡単に誘う相手もいないし、暇を持て余す。
「……ひとりかぁ」
商店街に入れば呉服屋、花屋、スーパー等…様々な店が立ち並んでいる。
その中で美月はふと目に付いた本屋の前で立ち止まった。
店内に入ると、ファッション雑誌、週刊誌、漫画…沢山ある中で小説置き場に目を通す。
ふと美月の目に『Vampire』のタイトルが入って来た。
引き寄せられる様にして、その本を手に取る。
パラリと捲ると、オカルト小説だったらしく、吸血鬼が人間の血を吸い、吸われた人間が吸血鬼になるっていう一般的なものだった。
そういえば、イルトも血を飲むのよね?
最初に出会った時も、“血が欲しい”って言ってた。
…ずっと血を飲まないと死んでしまうのかな。
続きが気になって、本を閉じると会計を済ませて外へ出た。