吸血鬼の翼
「…な、に…!?」

あまりにも急な展開に思考が上手く回らない様子のリフィアはただ目を見開いた。
後ろから妙に張り詰めた威圧感の所為で振り向く事が出来ないリフィアは額に冷や汗をかく。

いつの間にか背後を捕られていたなんて露知れず、リフィアはただ動揺するばかり。

気配は感じられなかった。

況して、気付かれずに自分の横を通り過ぎるなんて有り得ない。

野生の感を持つ、半獣人にすら察知出来ないくらいの気配の消し方だ。

疑問が頭の中で溢れて今にもパンクしそうな状態を取り払おうと努めてリフィアは落ち着こうと呼吸を繰り返す。

「…坊や?」

「……お前の他にも仲間はいるの…?」

少しの時間が過ぎ、どうやら今の所、危害を加える素振りがない相手に喋り掛ける。
この無気力な声は自分の答えと合致している。
そして、やはり会話の成り立たない状況にリフィアは溜め息を吐き、口を開いた。

「“向こう”から来た子だとは思っていたけれど、その新緑の髪はもしかして…」

「……………。」

リフィアの行き着こうとしている考えの先をイクシスはただ見つめる。

「貴方、あの厄介な神父の血筋なのね。」

「……関係ない…」

イクシスの伸ばした手はリフィアの首もとを掴み、徐々に締め上げる。

ゆっくりと圧迫される力にリフィアの心はじわじわと恐怖が押し寄せられる。

「…仲間ならいるわ、坊やじゃ適わない仲間がね。」

漸く白状したリフィアにイクシスは首を絞める力は緩める。しかし、その手は首を掴んだまま離さない。

「……捕まえた人間は何処?…」

無気力に口を開くイクシスは誘拐された人の在処を問う。
それに対してリフィアは嘲笑気味に笑う。

「坊やにはどうでも良いんじゃないの?無関係の人間なんて」

「……煩い…殺すぞ…」

声のトーンを下げて威嚇すれば、リフィアの体は小刻みに震える。

何故なら、本当に殺されると思う程、イクシスの声は冷たいものだったからだ。

< 175 / 220 >

この作品をシェア

pagetop