吸血鬼の翼
「……何故、…女ばかり狙う?」

イクシスの口調は相変わらずのものだったが、何処か強制的な凄みを持つ声だった。

首を摘まれてるリフィアに選択肢等、1つしかなかった。

「坊やなら、もう気付いているんじゃないの?」

意味深な発言をするリフィアにイクシスは眉一つ動かずに口を開いた。
確かに心当たりがない訳ではない。

「…捜しているのか…“お前等”も…」

「フフフ、そうね。」

曖昧に言葉を発する事でイクシスは相手の動向を窺う。
どうやら、己の考えているものと一致してるらしい。

ルイノがアイツに託した事。
それをコイツ等も捜しているというのか。
異世界の救世主。
絶対的存在。
理由があるのだとしたら…

「……言え、何の為に捜す?…」

「私は捕まえるだけだから、知らないわ。」

不利の状態に在るにも拘わらず、リフィアは興味なさそうに白を切る。
イクシスは溜め息を吐くと今度は本気でリフィア首を片手で絞めに掛かる。

「…う…ッ…」

「……死にたい?…」

ギリギリと音が出れば、首の骨を折る勢いで圧迫させる。
華奢な体の何処にそんな力があるのかと思うくらいの強さだ。

リフィアの紺の瞳からは息を吸えない苦しさに涙が溢れ、顔色は一気に真っ青へと変わる。
絞めているイクシス本人の様子は全く変わらず、無表情のままだ。

殺される…
本当に容赦ない力で何の躊躇いもなく。

リフィアの心は恐怖心で支配され、自然と体の力が抜けて立てなくなる。
イクシスは自身の体重を支えきれなくなったリフィアから手を放した。

「…ゲホッ……」

息をまともに吸えず、くの字に体を曲げたリフィアは咳き込む。
それをイクシスは物でも見るかの様な瞳で見ていた。

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