吸血鬼の翼
幾らか階数を上り詰めていく内に鳥肌の立つ様な寒さがイクシスを襲った。
凄い冷気、空気が薄いからなのだろうか。
それに加えて、何者かの威圧を感じる。

思考を巡らしていく間にいつの間にか目の前には1つの部屋の扉へと来ていた。
見た感じ、どの部屋よりも大きいらしく、両方から開けられる扉になっている。

「此処よ。」

リフィアは溜め息を吐きながら、イクシスへと話し掛ける。
彼女を拘束している為、イクシスは無言で片方のドアノブを引く。

やはり入って見ると、想像してた通り広い空間がそこに広がっていた。

そこには誰も居らず、壇上にある舞台袖のカーテンが割れた窓から吹く風に寂しく揺れていた。

「……捕まえた人は?…」

「急かさないで、舞台裏に居るのよ。」

イクシスは先にリフィアを歩かせつつ、辺りを見回す。
確かに威圧を感じたというのに今では嘘みたいにソレがなくなっていた。

何処かへ消えた?

それが妙に頭に引っかかってイクシスは気忙しく室内の至る所へ視線をやる。

「……仲間も居るの?…」

「さっきまで居たみたいだけど、今は留守してるみたいね。」

淡泊に答えたリフィアは気にも止めてない様子で舞台裏の入り口へと向かって歩いていく。

不在と知ったイクシスだが、油断してはいけないと感じたのだろう。
充分に注意してリフィアの後を追った。
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