吸血鬼の翼

「何が言いたいんや」

「さぁね、その位自分で考えなさいよ?魔術師君!」

額に薄ら汗を流すラゼキにリフィアは嘲笑うだけ。
千秋を別の場所に隠されているらしい事を理解した佐々木は怒りに震えて唇を噛み締めた。

「ンだよ!千秋は何処だ!?」

「佐々木君、落ち着いて!」

自分達を蔑むリフィアに対して拳を振るおうとした佐々木の腕に美月がしがみついて抑止する。

「…アイツの所に居るって言うんか。」

ラゼキの慎重な声音にリフィアは更に口角を吊り上げる。

「フフフ、そうねぇ~私と遊んでくれたら教えてあげても良いわよ?」

「茶化すなッ答えろ!」

リフィアの冗談めいた態度にいい加減痺れを切らしたラゼキは拳を握りしめる。
そして焦燥と怒気混じりの声を広間へと張り上げた。
その場に居た誰もがラゼキの激情を感じてビリビリと肌に伝わって行く。

あの雨の日と同じだ。
険しく雄々しい表情、それに怖いと感じる雰囲気。

ソレはリフィアに向けられたモノだったが美月は主観的に捉えて身を強張らせる。

それにどうやら、ラゼキには心当たりがある様子だ。
一体何を知ってるのだろう。

佐々木やイクシスも2人のやり取りに固唾を呑む。

千秋は何処?

「怒る姿も素敵よ、魔術師君…いいわ、教えてあげようかしら」

満足げにリフィアはそう言うと緩慢な動作で顎を使い広間の入り口を指し示した。
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