吸血鬼の翼
「そういえば、赤子が居ないね?どうしたのかなぁ」

「お前には関係ないやろ」

ロヴンが首を傾けてラゼキに問えば、吐き捨てる様な返事が返って来る。

「あっそ、じゃあ…そこの子に聞こうかな?」

ニヤリと口元を歪めたロヴンはイクシスを目掛け、床を踏み台に物凄い速さで走って来る。

「イク坊!!」

慌てたラゼキが標的にされたイクシスを腕で押し飛ばす。
しかし、その場から逃げ切れなかったラゼキはロヴンと衝突してしまう。
鈍く激しい音が広間に響き渡る。

「…ラゼキ…!」

イクシスは床に叩きつけられ、苦痛に腰を押さえながら、瞑っていた瞳を開く。

そこにはロヴンがラゼキを床に押さえつけている光景が広がっていた。

「アハハ、馬鹿な魔術師!逃げれば良かったのにねぇ?本当に赤子の周りにいる人間は滑稽だよ!」

ラゼキの両手首を拘束している。そのロヴンの腕に抵抗するラゼキは力の限りはねのけ様ともがく。

「残念、無駄だよ!さっき飲んだばかりだから、力有り余ってるんだよねぇ」

両足もロヴンの足でしっかりと固定されてビクともしない。
何処までも人を見下したロヴンの態度にラゼキはこめかみに血管を浮き上がらせる。

「やかましい、な…ホンマにお前は」

苦悶の表情でラゼキが抵抗するのを見てロヴンは人懐っこい笑みを浮かべる。

「いいねぇ、その表情…遊びがいがあるよ!」

言い終わったと同時にロヴンはラゼキの横腹を片方の拳で殴りつける。
ラゼキの口からは押し出される様に息が吹き出る。
そんな状態に構う事なく、ロヴンは有無も言わさず殴打する。
殴る殴る、ひたすら殴る。
ただ純粋に痛めつける事を楽しんで何回も繰り返した。
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