吸血鬼の翼


「異界の食いもんって思って少し抵抗あったけど…、結構うまいやん。」

ラゼキはお菓子を口に含んで機嫌良くしゃべっている。
一方の美月は椅子に座って窓の外を見ていたが、“異界”という言葉に反応してそのまま振り返った。

「…イルト達の“世界”って、どんな所なの?」

率直に聞いてみると、イルトはお菓子を食べる事に夢中になっていたのだろう。
頬張っていたものが喉に詰まり、口から噴き出て胸元を軽く叩きながら咳をする羽目になっていた。
美月も驚いて心配して立ち上がったが、ラゼキがイルトの背中を擦ってあげている。
ホッと胸を撫で下ろしている所でラゼキが美月の疑問について答える。


「…ん~、何ていったらいいんやろうか…強いて言えば身体的特徴を挙げると“この世界”の人間達と異なった姿形、例えば半獣人とか…能力者も“ココ”よりは比較的多い所や。まぁここみたいに普通の人間もおるけどな。」

「へぇ~。」

美月はその話を集中して聞いていた。
イルト達は当たり前の様に思うものも、美月にしてみれば架空の存在だ。
現実離れした“世界”―

これは夢なのだろうか

不意にそんな思考に襲われるが、こんなに長い夢はないだろうし、彼等は消える事なく美月の目の前にいる。

「…なぁ、嬢ちゃん。」

「……え?」

いきなり、ラゼキに話しかけられた美月は身動きが取れず、挙動不審になってしまう。
イルトは少し落ち着いて来たのか、黙ってラゼキを見ていた。

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