吸血鬼の翼
静かな雷鳴
「…やっぱ、何もないわ。」
「…??」
「…」
ラゼキは静かにそう言うと話の腰を折った。
美月はラゼキの様子を不思議に感じたが、その時は特に気にならなかった。
“異世界”の話を聞いた後だからだろうか―。
イルトも黙って、再びお菓子を食べ始めた。
窓の外を見るといつの間にか暗闇が広がっていた。
時が経つのは早いものだ。
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━…
午前2時頃―。
夜空にポツンと浮かんでいる雲から、黒い稲妻みたいなものが走り、真っ直ぐに公園のグランドへと墜落した。
だが、周囲の住民達は稲妻が発生したのにも関わらず、ざわめき等は起こらなかった。
むしろ、静か過ぎるくらいに。
稲妻が止むと砂埃の中からうっすらと人影が見えた。
「…“ここ”に逃げたか、あの吸血鬼。」
漆黒の服を纏った青年が砂埃の中から確かな形として姿を現す。