吸血鬼の翼
月はグランドを淡く照し、ぼやけてはいるものの、人の容姿を捕らえた。
灰色の髪の色と漆黒の服だけを―。
青年は辺りを見渡すと一番高い木に目をつけ、それに向かって地面を跳ね返して跳躍し、素早くその木に着地し、繰り返し建物を目掛け跳躍すると、暗闇へと姿を消した。
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朝焼けの色が空一面に染まる頃、美月は重たい瞼を押し上げてムクリと上半身を起こした。
枕の向こうにある携帯を手に取り時計を見る。
「まだ…6時。」
学校なら歩いて行ける距離の所にあるし、それまで十分眠れる。
イルト達もまだ寝ているだろう隣りの部屋で。
もう隠す必要もない訳だし。
ラゼキの催眠術で母は彼の存在を知ったし、確か私の従兄弟か何かで通ってる筈だ…。ラゼキも同じく。
お母さんには申し訳ないけど…。
少なからず罪悪感を抱いていた美月だったが、睡魔に襲われて再び就寝しようと布団を頭まで被った。