吸血鬼の翼
一体何だったんだろう―?
昼間の時から美月の思考はあの黒いものに支配されてしまっていた。
気のせいだと思いたいのに何故か胸騒ぎがする…。
「寒い…」
ベッドに仰向けになって寝ていると冷たい気温に襲われる。
その原因である窓の方に視線を送って見れば、案の定開いていた。
美月は閉めようと冷たい床に足をつけて窓際まで近付き、窓に手をやって外を眺める。
空の青さを隠す様に雲が広がり、今にも雨が降る気配を感じさせた。
「…もうすぐ降るわね。」
「そうやな~嫌な天気になりそうやわ。」
「何か体がだるい…」
答えが返ってくるとは思っていなかった言葉に対して返事があった。
驚いて振り向いてみるとドアの前に何時の間にかラゼキとイルトの姿が―
「ドアをノックしてから開けてくれない?」
心臓の鼓動が早く打っているのを体全体で感じ、美月は不快の表情を2人に向けた。
「すまんな。嬢ちゃんも女やし気にするわな」
「当たり前よ…!人を何だと…」
「ごめん!」
怒りを露わにした美月の表情を見てイルトは慌てて謝罪をして来る。
「…もういいよ」
なんだか、イルトに謝られると怒っていたものが萎えてしまった。
気力がなくなった美月の面持ちが気になったのか、イルトが側に寄ってくる。
「元気ないな…大丈夫か?」
「ありがとう…平気よ」
大丈夫だと意思表示をした後、窓際から落雷の音を耳にした。