吸血鬼の翼
体を震わせていたのが分かったのか、相手の動きが止まり美月を押し退ける。
「…ゴメン」
少年は罰の悪そうに美月を見ていた。
自然に体の震えがなくなり、慌てて我に返り、美月は自分の羽織っていた上着を少年に被してやる。
「ううん。いいよ、それより大丈夫?血が出てるみたいだけど…」
「…」
そう質問すると急に少年は黙ってしまった。
美月も何か悪い事を聞いた気がして俯く。
すると気遣かったのか、少年は首を縦に振り頷いた。
「…大丈夫」
「救急車…呼ばなくて平気?」
そう聞くと、少年は首を傾ける。
呼ぶ必要は全くないと言いたいのだろうか…。
美月が思い倦ねているのを余所に少年は口を開く。
「何?キュウキュウシャって?」
「え?」
難しい言葉を言うように美月の言った言葉を繰り返し、疑問を投げ掛けられた。
救急車の事を知らない人なんているのだろうか…。
そんな事子供でも知っている。
どう言えばいいのか、美月はその事について考えていると、先刻私が気になっていたものが少年に被した上着から覗くのが見えた。
「それ…」
美月はそれが何なのか分からなくて少年に聞いてみる。
美月の指している『それ』に少年は気付く。
「ああ。コレ…?」
少年が言葉を発すると同時にバサッと何かが開く音がした。