吸血鬼の翼
殲滅しなかったのではなく、殲滅出来なかったのだ。
その赤子は白い暖かな光を帯びていて、半獣人や人間達が手を掛けようとすれば、その光が手を拒んで、弾き出し攻撃をしてくる。
その"力"は恐ろしく強い威圧で相手を地に捩じ伏せた。
逆に消滅させられ兼ねなかった。
何かの結界が張られてあるのか、はたまた赤子による不思議な力なのか────。
よく見てみると赤子の背中には小さな翼が生えている。
この光の根源がこの翼であるのかそれは誰にもわからないまま……。
その子は生き延びた。
決して誰にも頼ることもなく、人々から姿を消していった―。
又、その存在は人々の記憶の片隅に置かれ忘れられていく。
そうして幾つもの月日が流れていったのだった。