吸血鬼の翼


数日が過ぎた───…。



いつまでも居ていいと言う彼の言葉に甘えて何日も滞在している。
…最早、住んでいると言った方がいいのだろう。

穏やかに大地を照らす太陽に素肌では出れないが、隠してしまえば問題はなかった。

綺麗に洗われたローブを身に纏いイルトは心が弾み、礼拝堂の中心にある噴水の辺りを無邪気に走り回る。

「コラ、イルト。あんまりはしゃぎ周ると危ないよ」

怪我をしているイルトの足と背中を包帯などで施しているが、完全に癒しきれてはいないのだ。

「平気だよ」

ジャンプをして自分の体の容体が健全だと主張した。

「…そうだね」

ルイノは諦め、イルトの主張に従った。
足は柔らかい布靴を履かせているし、草がクッションになっている。
ここは危険物などない。

怪我が悪化する様な心配はなかった。

イルトのはしゃぐ姿を見て一息した後、ルイノはベンチに腰を下ろして手に持っていた聖書の本を開いた。

しばらく黙読をしていると鈍い音がそこら中に響き渡った。


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