吸血鬼の翼


本を閉じ、ベンチに置くとルイノは素早く鈍い音のした方へと足を運んだ。

真っ直ぐ行って礼拝堂の建物を左に曲がった扉の所に彼は…いた。

「痛~」

案の定、そこには涙目になって地面に座り込んでいるイルトの姿がある。頭をぶつけたのか赤くなって少しコブが出来ていた。

「大丈夫?」

ルイノはイルトのコブになっている部分を優しく擦ってやる。やっぱり油断は出来ないなと青年は少しばかり、さっきの己の甘い考えを後悔した。

「ルイノ!!」

「え!?」

突然、名前を呼ばれた彼は慌てて声のした方角を見る。
声の主はヒョコッと礼拝室のドアから姿を現した。

年頃はイルトとさほど変わらない少年でオレンジ色の明るい逆髪は日の光によく映えている。
髪と同じ色の生意気そうな目はイルトを捉え、彼は一差し指をキツくイルトに向けた。

イルトは訳の分からないまま、ぶつけた頭を押さえ眉を顰(ひそ)め相手の様子を伺った。

「何やねんこのガキは!?乱暴な奴やな!いきなり飛び込んできおったで!!」

「ラゼキ…」

声を荒げて、偉そうに振る舞う彼に不満を感じたイルトは早々と立上がりラゼキに威嚇する様に怒鳴る。

「ガキって俺とあんまり変わらないだろ!!それにお前がドアを開いたから、こっちは怪我をしたんじゃないか!!」

「何やて~」


2人の出会いは互いにあまりいい印象ではなかった。

疲れたように溜め息を漏らしたルイノは喧嘩を止める為、仲裁に入った。


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