吸血鬼の翼
何とか喧嘩を止めようとするが、2人は頭に血が登っていてルイノの話を聞こうとしない。
だが、このまま放って置く訳にもいかないのでめげずに止めにかかる。
「まぁまぁ、抑えて」
「そやからこのガキが~」
「イルトだって言ってるだろ!!」
ルイノの言葉も虚しく2人の言い争いは更に続く。
ハァと溜め息をつき彼らから視線を逸らしたその時、ルイノはこの丘の下にある町の方から煙が上がっている事に気がついた。
「ラゼキ、イルトを礼拝堂の中へ!!」
「何や!!またか!?」
ルイノは少しだけ強くラゼキの背中を押して礼拝堂へ避難する様に促す。
ラゼキも分かっている様子で表情から焦りの色が窺えた。
2人の会話に全く話の見えて来ないイルトはただ困惑するばかり。
「ほら、イルトやったっけ?こっち、来い!!」
ラゼキに手首を掴まれ、礼拝堂のドアの所まで行くとルイノはそれを確認してから駆け足で煙が上がっている町へと向かう。
「ねぇ、ルイノは!!?」
「多分…、アイツ等のとこに行くんやろ」
「アイツ等…?」
状況が理解出来ていないイルトは思案の瞳でラゼキを見るが彼は何も語らないまま、強制的に礼拝堂の中へ入らされた。