吸血鬼の翼
天気は快晴だ―。
皮肉なくらいに…。
ぼんやりと外を見ている美月にイルトは考えていた事を言いたいのだろうか、側に寄って来た。
美月は少し驚いて距離を取り、イルトを見返す。
「…何?」
「好きじゃないなら、行かなきゃいいだろ?」
イルトは抱いていた疑問を率直に美月に向けてそう言い放つ。
私だって出来れば行きたくない。
息も詰まりそうなあんな所。
でも…、ちゃんと行かなきゃと思う自分もいる。
私の心は矛盾していて真面目な自分が嫌で…。
泣きたくなるくらいに…。
「…でも、行かなきゃいけないわ…」
美月は渋々と学校へ行く支度をする。
今頃、母は仕事でいないだろうし、朝ご飯も作らなきゃいけないし、正直…億劫だ。
そんな美月の姿を見てイルトは不満だったのだろうか、彼女の腕を掴み自分の所まで引き寄せる。
「ちょっ…」
「どうしても行かなきゃいけないのか?」
少し不貞腐れた顔で美月を見つめて来る。
それが妙に可愛く思えて美月は含み笑いをした。
「…いいかな、一日くらいサボッても。」
そう言うとイルトはパッと晴れる様な明るい笑顔を見せた。
美月は驚いて彼を瞠目する。
なんて素直な笑顔なんだろう。
太陽を連想させる様な眩しい表情―。
私にはそんな笑顔は出来ない。
そんなイルトに尊敬をしてしまうくらいで。
「なぁっ!俺、もっと“この世界”を知りたいから教えてほしい!」
嬉々としてイルトは美月の手の平を握り締めてそう言う。
美月も何だか嬉しくて頷き私服に着替えて、彼に町を案内する為に外へ出かけた。