吸血鬼の翼
「ラゼキ、ソウヒ、おはよう!!」
バンッ───!!
2人の寝室の扉を勢い良く開け放ち、大きな声を出して中に入って行く。
するとそこには予想していた通りの彼等の姿があった。
1人はベッドの上で上体だけ起こし、オレンジ色した頭を面倒くさそうにポリポリと掻き、目はまだ夢から覚めきっていない様子でイルトの顔を見る。
反対側のベッドを見ると、1人は完全に夢の中…心地良さそうに寝息を発てている。
少し呆れたイルトだったがお構いなしにズカズカと遠慮なく靴音を鳴して、そのまま足を進める。
「……何やイルか、もうちょい静かに入られへんかな…お前は……」
「『何や』はないだろ。起きるのが遅い!」
疎ましそうに言うラゼキに動じる事なく叱咤した後、イルトはサッとカーテンを端の止め金に掛け、閉め切っていた窓を開けた。天気が良くて、そこから穏やかな風が陽射しと共に入り込んで来る。
その陽射しがまだ寝ているソウヒの輪郭と肩ぐらいまで伸びている焦げ茶の髪を鮮明に照らしていた。
少しだけその光に反応して顔を顰(しか)めたが、寝足りないとでも言いたいのか、ソウヒは眩しく自分を照らしていた光を避ける様にして毛布を頭まで被り、寝返りをうった。
…流石にこのソウヒの態度にイルトとラゼキは呆れた眼差しを送る。
ラゼキは力なく溜め息を吐いてから、今度は眉間に皺を寄せて一気に酸素を肺に取り入れた。
「ゴラァ!ソウヒ!!起きんかい!図太い男やな、窓から放り出すで!」
「ラゼキ…」
ラゼキはソウヒの被っていた毛布を思いっきりひっぺがした。
最早、彼の手元には毛布がなく寒さを感じ取ったのだろう。
身震いをしてベッドから飛び上がる様にして起きた。