吸血鬼の翼




「旨いっ」

朝から元気の良いソウヒは、既に朝食を平らげている。皿は三枚も積み上がっていた。
そんな彼を唖然としてみていたラゼキは片手にカップを持っている。

「ソウヒはよく食べるな~」

イルトは素直に驚いてソウヒの食欲に目を見張った。
だが、イルトの側にある食物も皿があるのみで中身は既にない。皿の量はソウヒの倍はある。

「…お前も大概やろ。」

顔色の冴えないラゼキはソウヒから隣に座るイルトへ視線を移した。
イルトはラゼキの言った意味をあまり理解していない様で頭を傾けた。

「やっぱり、ルイノの飯は最高だな!」

幸せそうな表情を浮かべるソウヒはスープを啜りながら、笑う。イルトも焼いたパンを食べながら、コクコクと黙って頷いている。

「そう言って貰えると嬉しいなぁ」

食堂にひょっこりと姿を現したルイノは食べ物の乗ったトレーをイルトの向かいのテーブルに置き、緩慢な動作で席に座った。
今朝の様子の面影はなく、イルトはホッと胸を撫で下ろす。
ルイノも遅れながら、食べ物を喉に通し始めた。

「ラゼキ、食べないの?」

ラゼキの周りの食べ物は減ることなく未だにそこにある。
ソレに気が付いたルイノは思案の瞳でラゼキの表情を窺った。

「ちょっと胸焼けしてるだけや、ちゃんと食うから心配せんでええ。」

苦笑ながら、ラゼキはフォークで野菜を突き口へ運ぶ。
どうやら、体調が優れないらしい。



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