吸血鬼の翼
* * *
午後3時―。
どのくらい歩いただろうか―。
何時もより、歩くペースが落ちて来た様な気がする。
心なしか足取りも重い。
一方のイルトはまだ体力があるのか、ハキハキと元気に進んで行く。
興味があるものを目にする事は苦痛にはならないからだろうか…。
「そろそろ、休憩したいんだけど…。」
「あっゴメン、もしかして疲れた?」
「…うん」
イルトは疲労を見せる美月の顔を窺い慌てる。
美月は小さな子供に接する様に彼の手をとり、自販機まで歩いた。
イルトがどんな物を好んで飲むのかは分からないが適当に選んでボタンを押す。
2つのペットボトルを取ると道路の向こうに視線をやる。
直ぐそこには土手があるので草の茂みに座り、飲み物でも飲んで休む事にした。
イルトは其処へ寝転がり、両手を頭の後ろで組む。
フワリと穏やかな風が彼の髪を靡かせる。
淡い水色…まるで絹の様な…。
きっと、触ると柔らかいんだろうなぁ…
一風変わった髪色にやはり別の世界の人なんだなぁと感じさせるものがあった。
…別の世界―?
そういえば詳しくは聞いてなかった。
彼の言う“この世界”とはどういう意味なのだろうか…?
外国ってアメリカとかそういう所なの?
…違うよね…そんな風には感じられなかったし。
イルトからちゃんと説明を受けていない美月は微かに疑問を抱き始めていく。