吸血鬼の翼
呪縛【過去編④】
夜風が気持ち良くて、うとうとしていたイルトは寝転がったまま何となく窓の外を見た。
綺麗な満月。
空も雲一つなくて、本当に美しいと思った。
それは先程までの話。
今は胸がざわめいて、眠れない。
何だろうか、この高揚感は…
その感覚が足元まで来ている様な気がして落ち着かない。
ソレの所為なのか、心なしか喉が焼ける様に熱い。
この“渇き”は水等では、満たせない。
本能が求めているのだ。
―血を欲せと。
体と本能が突き動かす。
しかし、ちゃんと理性も残っているので易々とその行動を実行させまいとして歯を食いしばった。
「…ダメだ、止めろ。」
寄りによって、何故今なんだ?
自分に自問するが、答えは出ない。
そんな焦燥感に駆られて拳を壁にぶつけた。
渇きを紛らわす為に水を飲みに行こうと自室のドアノブに手をかけた。
食堂へ行くと当然、灯りは消されている。
丁度良いかもしれない、今自分の顔を誰かに見られでもしたら驚かせてしまうに違いない。
カップに水を注いで口に運ぶ。それを幾度か繰り返し喉へ流し込む。
やはり、気を紛らわすだけで、渇きは消えないまま。