ラストボーイ
「痛かった?」
ううん。違うよ勇志くん・・・・。
あたしは嘘をついてるの。
「んーんっ・・・ありがとうっ・・・。」
今はこれしか言えないあたしの気持ち。
落ちてくる涙を手で拭った。
泣くつもりなんかなかったのに・・・
「俺さ。」
冷やしてくれてた勇志くんの右手が、
あたしの手を優しく握る。
冷たい・・・・・。
「俺さ、芽生ちゃんの事結構見てんの。だから表情ひとつで分かったりとか?さっきも何かいつもと違ったからさ」
勇志くん・・・・・。
「愁には負けるけどね。・・・けど笑っててよ。辛かったら泣いてもいいし、もっと俺を頼って」
どうしてこんなに優しくしてくれるんだろうって疑問と、
嘘をついてる事への罪悪感で、
あたしの感情はぐちゃぐちゃだった。
でも今あたしが泣いているのは、
嬉しかったから。
こんな風に寄り添ってくれる人がいる事に。
「・・・・・ありがとっ」
「うん、全然」
あたしは勇志くんの手を握り返した。