ラストボーイ







時間がすごいゆっくり流れてる気がした。

勇志くんはあたしの手を、
何度も転がすように優しく握る。



すっかり泣き晴らして、
あたしはやっと我に返って勇志くんを見た。





「あ、あっあの・・・・・」




あたしってば何流されてんだろ。

それにあたしも握り返しちゃったしっ・・・。




んもーっ最悪。




慌てふためいたあたしを見て、
勇志くんはクスクス笑い出すし・・・・・。





「どう?落ち着いた?」



違った意味で落ち着いてないけど、
泣いたらすっきりしたかも。




「・・・・・う、うん。ありがと。」




あたしがそう言うと勇志くんは立ち上がった。



そ、そうだっ・・・
礼ちゃんと愁ちゃん待ってるかもしれない!




早く戻らなきゃっ・・・・・!




あたしが立ち上がろうとした瞬間、
あたしの頭に手を置いた勇志くん。




え・・・・・なに?






「俺芽生ちゃん以外にこんな優しくしないから。無理だけはしないでね」





「・・・・・あ、うん。」





あたしだけ・・・・・?


勇志くんは誰にでも優しいよ?

きっと皆もそう思ってるのに、
なんであたしだけって言うんだろ。






「ははっ、まぁ気にしないで戻ろっか」



よく分かんないけど・・・・・




「うんっ。ありがとね勇志くん。」





さっきよりも痛みが和らいだ気がした。


帰ったらママに手当てしてもらおう・・・。









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