ラストボーイ
錆びたブランコが小さな金属音を出して、
泣いてる芽生の姿があった。
ただただホッとした。
俺に気付いた芽生は、
泣き腫らした顔で俺の名前を呼んだ。
あの日と同じ場所で。
「芽生ちゃん、家出かな?」
好きな女が目の前で泣いてるのに、
こんなふざけた事しか言えない自分に悔しくなった。
赤くなった芽生の手首にそっと触れた。
一瞬びくついた芽生に、あいつへの怒りが込み上げてくる。
「俺も怖い?」
首を横に振った芽生。
俺が守るって約束しただろ。
何でもっと俺を頼ってくれない?
俺はそんなに頼りないのか。
溢れてくる思いに、
芽生を抱き締めたかった。
でもそれは俺の気持ちだけで、
俺はまだ芽生の幼馴染みでしかないから。
落ち着いてきた芽生が、
少しずつ俺の問いかけに答える。
幸い、手首を掴まれただけで、
他になにもなくて安堵した。
仮になにかあったら俺は多分今すぐにでもあいつを殴りに行ってた。
すっかり暗くなって帰る事にした。
芽生を家まで送るまでが俺の仕事。
そうでもしてないと自分が安心出来なかったんだと思う。
公園の照明に照らされた芽生の顔を見て、
思わず笑いが止まらない。
目は真っ赤で鼻なんかまるでトナカイ。
「どんだけ泣いたの?笑」
可愛い顔が台無しもいいとこ。
これはこれで可愛いんだけど、
俺が馬鹿にしたような言い方で言ったもんだから芽生はまた目を潤ませて下を向いた。
「わかんないっ・・・。愁ちゃんに初めて嘘付いたから。礼ちゃんにも。罪悪感しかなくて・・・」
単に嬉しかったのかもしれない。
俺に対してそう思ってくれた事が。
それが俺と同じ気持ちでなくとも嬉しかった。
俯いて涙声で話す芽生を俺は抱き締めた。
俺の腕にいるこいつが愛しい。
でもその手が俺に回らないのが苦しい。
今にも自分の気持ちを吐き出したい、
そんな気持ちになった。
結果は見えてるのに、
いっその事そっちのが楽なんじゃねーかなとも思った。
「よしよし、芽生ちゃん何してほしいでちゅかぁ?」
溢れ出そうな想いを打ち消そうと、
俺は冗談混じりで芽生に言った。
「じゃあ、ぎゅうってして。」
駄目なのは分かってんだ。
俺が芽生にとってただの幼馴染みって事も。
でもほんの少しでもお前が俺を求めてくれるなら、、、
俺は好きでいてぇよ。
俺は芽生を強く抱き締めた。