ラストボーイ






「くっ、苦しいっ!!」





「我慢しなさい?もうすぐ終わるから。」





あたしは今まさにママに着付けをしてもらってる最中。


こ、こんなに苦しいの?!
ちょっと締めすぎなんじゃないっ?!






「ほ~ら、出来たわよ!」





はあっ。はあっ。苦しかったぁ。






あたしは鏡の前に立った。




白地に淡いピンクの花模様が可愛い。




浴衣を着たのは小学生以来だったから、
何度も角度を変えては自分の姿を確認した。






「なにこれっ?!すごいっ」






驚いたのは帯。





「芽生は体が華奢だから、なにがインパクトをひとつ出した方が可愛いと思ってね。」






「ありがとママっ!すごい可愛いっ!」






帯は大きなリボンになっていた。


早く礼ちゃんに見せたいなあっ♪






ピンポーン♪







そうこうしてる間に礼ちゃんが来た。







「あら礼ちゃん。いつもありがとうね?」






「いいえ、こちらこそ。お邪魔しまーす。」







部屋に入ってきた礼ちゃんは、
それはもうべっぴんさんで・・・・っ!!





紺色の浴衣に肩まである黒髪は、
可愛くお団子になっていて金魚の髪飾りが可愛い。






「礼ちゃんすっごく綺麗!!」






あたしがそう言うと礼ちゃんは少し顔を赤らめた。







「次は芽生の番っ!ほら!座って座って!」






あたしは礼ちゃんに言われるがまま椅子に座った。



座るたびお腹の辺りが苦しくて今朝食べた物が出てくるんじゃないかと心配だった。







「目閉じてて~。」







あたしは礼ちゃんにされるがまま、
黙って終わるのを待ってた。



唇にリップがのせられて、ようやく終わったみたい。






「・・・化粧映えするわね~。芽生目開けて!」






あたしはゆっくり目を開けた。
なんだかいつもより瞼が重い気がする。






「芽生!すっごい可愛い!!!」





礼ちゃんに鏡を渡されて、
あたしは初めて新しい自分と出会った。





な・・・にこれ~。




これあたしなのっ?!全然違う!






腰まであった髪は、
綺麗に巻かれてお団子にしてあって、
前髪も絶対しないであろう横分けで、
ママにもらったキラキラの髪飾りがすごく可愛かった。






メイクもいつもはリップだけだけど、
今日はマスカラもチークもしてあって、
ほんのり赤ら顔が今の時代は可愛いらしい。






「絶対はぐれちゃ駄目だよ?あんた今日いつもの1000倍可愛いから」






「大丈夫だよぉ!礼ちゃんありがとう♪」





ママが草履を出してくれて、
あたし達は愁ちゃんと待ち合わせしている駅に向かった。




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