ラストボーイ





着慣れていない浴衣に草履はやっぱり礼ちゃんの言う通り歩きずらかった。



普段の倍以上は時間がかかっている気がする。






駅が近くになればなる程、
浴衣姿の女の子や男の子が沢山歩いていて、
微かだけど太鼓の音も聞こえた。






「あ!いたいた!」





礼ちゃんが手を振る方には、
愁ちゃんと勇志くん、黄瀬さんがすでにいた。






愁ちゃんも勇志くんも浴衣で来たんだぁ♪
それにしても男前だなぁ・・・。



だって通りがかる女の子達振り返って見てるよっ?!






浴衣ってだけで雰囲気変わるなぁ。



愁ちゃんなんか大人のフェロモンっていうか男って感じだもん。







「ごめんねっ!待たせちゃった?歩きずらくてっ」





へ?


な、なにっ?!






あたしの顔何か付いてる?
それとも厚化粧すぎたとか・・・・・?






「あ、あのー・・・・・。」





愁ちゃんも勇志くんはあたしを見たまましばらく動かないし、黄瀬さんも驚いた顔してるし一体なんなのぉ・・・。






「芽生」





やっと喋ったぁ。







「ん?な、なにっ?」






「いや、なんも。行こうぜ?」







「うんっ♪」




何だったんだろ?





徐々に大きくなる太鼓の音と人の群れ。


手を繋ぐカップルや同じ学校の友達もいた。





「愁~金魚すくいしようよ!」






黄瀬さんは愁ちゃんの腕に自分の腕を絡ませて金魚すくいの屋台へと愁ちゃんを引っ張る。






「わ~ぁ!綿あめっ♪」






金魚すくいとは反対の綿あめにあたしは夢中でおじさんがくるくるお箸に巻き付ける作業をじっと見てた。






「芽生ちゃん、はい」





綿あめを差し出してくれたのは勇志くん。



食べたいのバレちゃったかな・・・。






「木内さんも、はい」






「勇志くんありがどっ♪ん~っ甘くて美味しい!!」







綿あめなんて何年振りだろ?




最後に食べたのは小学校の時に近所の駄菓子屋さんで買って以来だ。






「いただきー。」






「ちょっ、あっ!!!」






愁ちゃんに一口横取りされた。






「愁~あたしお腹空いたぁ。何か買いに行こうよ♪」






黄瀬さんに連れられて、
愁ちゃんは人の群れの中に入っていった。





仲良しなんだなぁ。






「なーんか嫌な感じ。」






「え?」






「黄瀬さん。だって皆で来たのに、これじゃ皆で来た意味ないし愁くんの事狙ってんのバレバレ。」







「えっ?!き、黄瀬さんそうだったの?!」





まさか黄瀬さんが、
愁ちゃんに恋をしてるなんて思わなかった。



礼ちゃんに言われてみれば、
確かに黄瀬さんのひとつひとつの仕草がそう見えてきた。





愁ちゃんも黄瀬さんが好きなのかな?





「芽生ちゃん何か食べたい物ある?」





「りんご飴っ!!」






「了解、そこにいて!」






「あたしもっ!」






一緒に行こうと思ったけど、
勇志くんの姿はすぐ人に飲まれてしまった。





りんご飴一人で持てるのかなぁ。






それにこの人混みだし、
愁ちゃんも黄瀬さんもどこ行っちゃったんだろ。







あれ・・・・・?礼ちゃん?




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