ラストボーイ
本当はあたしも愁ちゃんと金魚すくいがしたかった。
りんご飴も皆で一緒に食べたかったし、
射的だってやりたかった。
でも黄瀬さんが愁ちゃんを好きなら、
愁ちゃんはどうなんだろ?
愁ちゃんがもし、
黄瀬さんに少しでも思いを寄せているなら、
今日は二人にしてあげた方がいいよね?
愁ちゃんの気持ちは分からないけど、
あたしは愁ちゃんが笑っててくれて、
愁ちゃんが幸せならあたしも幸せだもん。
「ねぇ勇志くん、愁ちゃんは黄瀬さんの事好きなのかな?」
勇志くんに聞いてみたけど、
やっぱり勇志くんにも分からなかった。
「芽生ちゃんはどうなの?」
「あたし?」
「うん。芽生ちゃんは好きな人とかいないの?」
好きな人とか恋人とか友達とか、
区別を付けなきゃいけない理由があたしには分からない。
だって礼ちゃんも大好きな人だし、
勇志くんだって愁ちゃんだって大好き。
異性で大好きなのは勇志くんと愁ちゃん位で、
大好きだったらそれが好きな人になるの?
全然わかんないっ。
「あはは、そっか分かんない?」
なんか恥ずかしくなってあたしは小さく頷いた。
「一緒にいてドキドキするとか、モヤモヤするとか、いつも一番最初に頭に浮かぶ人って言うのかな?ごめん、俺もよくわかんないわ」
さっきいつもと違う勇志くんにドキドキしたけど、
モヤモヤはしないし、
一番最初に浮かんだ事もない。
「今が分からなくても、いずれ分かるよ。だからそんな考えなくて大丈夫だから笑」
「・・・・うん。」
あたしはいつ恋が出来るんだろう。
果たしてそんな人に出会えるのか不安になってきた。
もう高校生。
周りは彼氏や好きな人で、
毎日楽しそうに話してるけど、
あたしにそんな日はくるんだろうか・・・・・。
恋かぁ。あたしには程遠い話だ。
いつか手を繋いだり、
キスをしたりするのかな?
想像すら出来ないやっ。