ラストボーイ
「芽生っ!」
「礼ちゃんっ!」
人混みを掻き分けて、
礼ちゃんがあたしに駆け寄ってきた。
「心配したんだからね!なんもなかった?!」
「うん。ごめんねっ?」
礼ちゃんは自分の事はそっちのけで、
一番にあたしの心配をする。
「勇志くんありがとう。」
「俺は大丈夫だよ」
「ったく!愁くんはこんな時に何やってんのよ!芽生が迷子だったっていうのに。」
ご立腹の礼ちゃん。
綺麗な顔が台無しだよっ。
「そろそろ花火が上がるんじゃない?」
そうだ、花火という大イベントがあった。
今年初めての花火。
入院している時は病室の窓からほんの少しだけ見えたけど、真下で見るのは初めて。
どこから上がるんだろう。
何発か数えてみようかな?
「ここじゃよく見えないかもな。場所変えようか。」
あたしと礼ちゃんは勇志くんについて行き、
人で溢れた屋台の列から少し離れた歩道に出た。
長い間歩いたからか足が痛い。
やっぱり履きなれていない草履はだめだ。
「芽生、座る?」
「んーん、大丈夫っ!座ったら見れないかもしれないしっ!」
打ち上がる花火をひたすら待った。
どこから上がるのかも分からないのに。
「愁~っ!待ってよぉ」
右手に金魚が入ってる袋を持った黄瀬さんが走りずらそうにこちらに向かってくる。
その前を愁ちゃんがあたしたちの方に向かって走ってくる。
「ちょっと愁くん!さっき大変だったんだからね?!って話聞いてんの?!」
「わり、後でー!!」
礼ちゃんが言い終わる前に、
愁ちゃんはあたしの手を取って走っていた。
「ちょ、ちょっと愁ちゃんどこ行くのっ?!皆置いてっちゃだめだよっ」
「いいから走れ!」