ラストボーイ
ちょっと愁ちゃん一体なにっ?!
皆とはだいぶ離れちゃったし・・・どこ行くのっ?!
「この辺で大丈夫だな」
愁ちゃんに連れられて来たのは人一人いない河原。
「しゅ、愁ちゃんっ・・・一体どうしたの?!」
「いいから。見てて」
見ててって・・・何を見ればいいの?
全然訳わかんないよっ。
ヒュ~ッ。バーンッ!!
「すげーだろ?特等席♪」
生温い風と静かに流れる水の音。
その真上に大きな光の花。
花火見せるためにここまで連れてきてくれたの?
すごい綺麗・・・っ。
初めて間近で見た花火を目にしてあたしは言葉も出なかった。
だって本当に綺麗だったから。
「・・・すっごい綺麗。」
「だろ?感謝しろよな」
ありがと愁ちゃん。
やっぱり愁ちゃんはあたしの望みを何でも叶えてくれる。
今日一番楽しみだった花火。
何発か数えようなんて事も忘れて、
あたしはずっと空を眺めた。
その音が消えるまでずっと。
「すごい綺麗だった!ありがと愁ちゃんっ!あたしこんな近くで見たの初めてっ!」
少し照れくさそうに愁ちゃんが鼻をこすった。
まだほんのり火薬の匂いがする河原にはあたし達2人しかいない。
愁ちゃんどうやってこんな特等席見つけたんだろう。
「満足した?」
「うんっ!!!ありがと愁ちゃん♪」
「いや、今日ごめんな?ほら、黄瀬グイグイだからさ。芽生の事全然構ってやれなくて」
愁ちゃんあたしの事気にしてくれてたんだね。
だってあたし正直寂しかったもん。
いつも愁ちゃんが隣にいたから、いないのが違和感っていうか。
「それと・・・さ」
「なあに?」
「今日の芽生すげぇ可愛い」
や、やだっ愁ちゃんってば!!
真面目な顔して言われたら恥ずかしいよ。
でも素直に嬉しいな。
きっとあたし今顔赤いよね・・・・・。
「礼ちゃんが髪とメイクしてくれたのっ!すごい雰囲気変わるよねっ!何かあたしじゃないみたいっ♪」
「いつもの芽生も十分可愛いけど」
「ないないっ!愁ちゃんだって浴衣すっごくかっこいいよ!似合ってるっ!髪もいつもと違うし、これ自分でセットしてるの?!」
背の小さいあたしは、
できる限り背伸びして愁ちゃんの髪の毛を触った。
意外と柔らかくて細いんだなぁ。
ところどころ傷んでるのは染めてるからかな?
「髪崩れんだろ?!あんま触るな!」
「このこの~っ♪崩してやるぅ!!」
なーんてふざけてても、
あたしの手はすぐ愁ちゃんに拘束されちゃうんだけどね。