ラストボーイ
「毎日来てくれてたよね愁ちゃん。ごめんね。」
意外にも先に口を開いたのは芽生だった。
「このままじゃいけないって分かってたんだけど、気持ちの整理がなかなか出来なくて‥‥。けどちゃんと話さなきゃって。」
普段から自分の気持ちとか意見を言うのが苦手な芽生。
だけど今俺にゆっくり話そうとしてくれてる。
それが嬉しかった。
時折、顔を歪ませる芽生の話を俺は黙って聞いた。
「前みたいな関係に戻れない事も分かるの。礼ちゃんがあたしに対して抱いてた‥‥恨みとかも全部。けど受け入れられなくて‥‥。」
そう言うと芽生は目を潤ませた。
今こうして話してるのも辛いはずなのに。
「だけどね、あたし礼ちゃんに救われたの。」
芽生は俺がいなかった頃の話をした。
入学当初、周りがグループを作る中芽生は出遅れて、
孤立してた時に声をかけてくれたのが木内だった。
「だから‥‥礼ちゃんがあたしを恨んでても嫌いでも、あたしは礼ちゃんに感謝しかないし‥‥大好きなの。だから‥‥‥‥」
「もういいよ。分かってるから。」
テーブルに小さな音を立てて、
芽生の涙が落ちた。
泣くのを我慢してたのか、
咄嗟に芽生が立ち上がった。
「っ芽生!」
よろめいた芽生を何とか支える事が出来た。
俺に全体重がかかってるにも関わらず軽すぎる。