ラストボーイ






勇志くんは最後まであたしの話を聞いてくれた。



どれくらい話しただろう。






「ありがとね話してくれて。分かった気がする二人の絆。」







「ごめんねっ!あたしってば・・・こんな事話すつもりなかったのに・・・へへっ」






愛想笑いに空元気とはこの事だろう。



風でまとめていた髪がほつれて顔にかかる。



あたしは勇志くんに悟られないように、伏し目がちに髪を耳にかけた。







「なんで笑うの?」







え・・・・・?







「どうして笑うの?悲しいのに」






動いていた足を止める。
勇志くんはあたしから目を逸らさない。






「あたしはっもう全然大丈夫っ!」






本当は大丈夫なんかじゃない。





忘れたくても忘れられなくて、
あたしの中には今もあの日が残ってて、
なのにあたしは笑ってる。






本当は笑ってちゃいけない。




あたしは幸せになっちゃいけない。






「・・・ははっ。おかしいなぁ~。あたしどうしたんだろっ!」







ひゃっ。







勇志・・・・・くん?







いつもと違う男の人の匂い。


愁ちゃんとは真逆で甘くて優しい匂い。






「勇志くん・・・?」






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