ラストボーイ












ここへ来たのは久しぶり。
綺麗な墓石が並んでる中にあたしのパパも眠ってる。






時田家之墓‥‥。




そう書かれた墓石の前には、

誰か来たのか焚かれたばかりのお線香があった。







「パパ。久しぶりだね。」






あたしは手に持っていた線香に火をつけ、
軽く息を吹きかけてお供え物と一緒に置いた。





両手を合わせ今は亡きパパの姿を思い出したら涙が出た。







どうして泣いているのか、

何に恐れているのかこの時改めて分かった。









「パパ‥‥ッ、ママを連れていかないで‥‥っ」







声を絞り出して、

返事など返ってくるはずもない墓石に向かって、


あたしは言ったんだ。




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