ラストボーイ
最期の時
「無理してない?」
愁ちゃんがあたしの顔を覗き込む。
無理はしてない‥‥。だけどやっぱり怖い。
パパのお墓参りを終えて、
あたしは愁ちゃんに連れられてママのいる病室の前。
扉を開ければママがいるのに、
なかなか一歩が踏み出せない‥‥。
今どんな姿でこの向こうにいるのか、
ママが死ぬって分かってしまった今あたしはママにどんな風に接したらいいのか‥‥。
あたしよりもママの方が辛いし怖いはずなのに。
俯いてるあたしの頭に暖かくて大きな手。
「余計な事考えなくていい。泣きたくなったら泣け、笑いたかったら笑えばいい。おばさんは芽生に会いたいんだから」
愁ちゃんがあたしにくれる言葉は、
昔からあたしの背中をトンっと押してくれる。
向き合わなきゃ‥‥。
ママと残された時間を無駄にしないように。