ラストボーイ
ぶつかったのは愁ちゃん。
「芽生?」
上から降ってくる声は、
大人で男らしい低い声。
昔はあたしの方が大きかったのに、
今じゃあたしが見上げないと顔を見れない。
無造作にセットされた茶髪の髪に、
上手く着崩した制服、
すっと通った鼻、長い睫毛に切れ長の目。
愁ちゃんすっごいイケメンじゃんか!!!
「愁ちゃん~~~っ!おかえり!!」
あたしは愁ちゃんに抱き着いた。
それに優しい笑顔で頭をポンポンしてくれる愁ちゃん。
昔となんも変わってない♪
ん?くんくん。
愁ちゃん香水付けてるのかな?
すごいいい匂い♪眠くなりそうっ・・・。
「芽生。みんな見てるから・・・さ?」
そう。ここは教室。
女子からは冷たい視線を感じるし、
男子はボソボソ話ながら見てはいけないものを見てしまったという感じだろうか。
「あっ!ごめんね愁ちゃん!えっと紹介するね?あたしの親友の木内礼ちゃん!」
「はじめまして♪ちょっと芽生。すごいイケメンじゃん!!」
「よろしく♪木内さん。もしかして、俺がいない間こいつの面倒見てた感じ?大変でしょうちの子」
「そりゃあもう。言う事聞かないし、今日なんて家から学校まで汗だくになって走ってきたんだから。なんかあったらどうすんのよ!」
「しゅ、愁ちゃん助けて・・・礼ちゃん怖い!」
「走ったの?」
「うん走ったよ?」
「なんで?」
「愁ちゃん帰ってくるって言うから早く会いたくて!」
「危ねぇだろうが。で、なんともない?」
あたしは生まれつき喘息がひどくて、
運動を控えるように病院には毎回言われてた。
愁ちゃんは昔からそんなあたしを心配する。
「ぜんっぜん♪ほらっ元気ぃ~!」
「無理すんなよな。」
「愁ちゃんと同じクラスが良かったなぁ。」
「でも隣じゃん?」
「そうだけど、やっぱいつも一緒がいいもん」
でもこれからは、
毎日一緒にいれるんだよね?
昔みたいに沢山遊んで沢山話して、
考えたらニヤニヤしてきちゃった。
「あーっ!!!宿題してないっ!」
「あんたって子は・・・。あたしの鞄にノート入ってるから行ってきなさい。」
「ありがとっ礼ちゃん!恩にきります!」
「まったく・・・。」
「木内さん、あいつ大丈夫だった?」
「芽生?大丈夫なんじゃないかな?それに、愁くんが帰ってくるってすごい喜んでたから。いない時もあたしに思い出話してたくらい。」
「そか。ならいいんだけどさ。ほら、あいつ親亡くしたりして色々落ちてたからさ。俺がいたらまだ良かったけどさ、向こうにいる間そればっか気がかりだったから。元気そうで良かったつーか、可愛くなりすぎじゃね?」
「あははっ♪それ芽生に言ってあげて?あの子無自覚ってゆうか天然ってゆうか、危なかっしくてほっとけないわ」
「ありがとね木内さん。でももうへーき♪俺あいつのヒーローだから昔から♪」
「それなら良かった!あたしもちょっと楽になるわ♪」