ラストボーイ






「芽生ーっ!!遅いよ!」






「ごめんねっ!」






戻ると礼ちゃんが頬を膨らませてあたしをキッと睨んだ。



うっうぅ・・・・・怖いよ礼ちゃんっ。





「ほら、愁くん呼んでるよ?」




ボールを脇に抱えた愁ちゃんが、
笑いながらあたしに手招きをする。




そ、そうだっ!お弁当渡さなきゃっ!







「ちゃんと見てた?」





「うんっ!かっこよかったよ!!凄いよ愁ちゃんっ!全然練習してなかったのに!あれは何してたの?」





「あー。精神統一?みたいな。」






「音楽かなんか聞いてたの?」






「ははっ、違う違う。音はなーんも流れてないよ。無音の世界。」






テレビでスポーツ選手が言うには、
緊張をほぐしたり、周りの歓声や声援に気をとられて興奮しないように音楽を聞くとか言ってたけど・・・・・






愁ちゃんは逆なのかぁ。


無音の世界かぁ・・・・・どんな感じだろ。





あたしは両手で耳を塞いでみた。


手じゃ微かに音が聞こえちゃうかぁ。







「目を閉じて、音をシャットアウトすると、真っ白になるんだよ。」






「真っ白にしてどうするの?」






「大事なものでも何でも、自分が大事だと思うもの思い浮かべる。俺が今日考えたのは芽生の弁当♪」







げっ・・・・・。




お、お弁当っ・・・このタイミングで出す?






「作ったんだけど・・・自信ないかも?」







「いっただき~♪」






ちょっ・・・・・!!




そんな乱暴に引ったくったら、
ぐちゃぐちゃなお弁当がもっと酷くなっちゃうよ・・・・・!!







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