ラストボーイ
「芽生、愁くんが帰り待ってるって!」
「やったぁ♪懐かしいなぁ~。」
「愁くんって何か芽生の保護者みたいね。」
礼ちゃんの言う通りかもしれない。
小さい時から内気なあたしは、
いじめられてお母さんには話せなくて、
愁ちゃんに話したら愁ちゃんが助けてくれた。
パパが亡くなった時も、
愁ちゃんは一生懸命あたしが泣かないように寂しくないようにずっと側にいてくれた。
だから今こうして、
また愁ちゃんに会えた事が嬉しい。
愁ちゃんはあたしの大事な人だから。
愁ちゃんには感謝しかなくて、
愁ちゃんがいたから今が楽しくて、
ありがとうじゃ言い表せないよ。
「芽生~。」
放課後、あたしのクラスに愁ちゃんが迎えにきてくれた。
同じクラスの子は「芽生、五十嵐くんと知り合いなの?」なんて声もちらほら。
礼ちゃん曰く、
愁ちゃんの転入はこの学校のトップニュースみたいでイケメン帰国子女と言われ先輩にもすぐ話が広まったらしい。
確かにイケメンだもんなあ愁ちゃん。
「芽生まだ~?先帰んぞ~」
「ま、待って!いくっ!礼ちゃん明日ね♪」
歩くの早いんだよぉ~愁ちゃん。
あたしの足が短いのかな・・・。
「荷物持とうか?」
「んーん!大丈夫っ!てかこれからは毎日一緒に帰れるんだよねっ!すっごい嬉しいっ♪」
「俺がいない間なんかあった?」
「なんかって?」
「嫌がらせとか?・・・男とか?」
「全くないよ!男って彼氏とか?」
「ん」
「いないし、好きな人出来ないっ!」
「・・・そっか、なら安心かも」
ほんっと心配症だなぁ愁ちゃんは。
あたしもう高校生だよ?
いつまでもおんぶに抱っこなんかしないのに、
ここまで心配するなんてなんだか可愛い♪
「愁ちゃんは?向こうで何かあった?」
あたしの歩くペースにさりげなく合わせてくれてる愁ちゃん。
上から下まで見てもやっぱり愁ちゃん大人になったなあ。
「俺?俺はなんもないかな。芽生は心配だったけど、向こうで金髪美少女の彼女がいた訳じゃねーし、毎日バスケ。」
「えーっ!愁ちゃんかっこいいのに?!それで彼女出来ないの?!ありえないっ!」
「いや、作る気ねーしさ」
「ふ~ん。もったいないなぁ~。でもバスケはちゃんとやってたんだね♪部活はやるの?」
「部活か~。やらないかなぁ多分。」
「なんでよっ!!!」
「芽生できねーじゃん?それに一緒帰れないっしょ?無理無理。趣味でやる」
「あたしは大丈夫だよっ?それにあたしが待っててもいいしっ!!それなら一緒帰れるよっ?」
「いいの。んな気にしなくていいから。一緒いれなかった分ちゃんと取り戻さないとさ?」
そう言ってニカーって愁ちゃんが笑うから、
あたしは嬉しくって嬉しくって。
「うんっ♪おかえり愁ちゃんっ!」
「ただいま。」