ラストボーイ
勇志くん・・・。
「僕はただっ芽生ちゃんが好きでっ!」
尚もあたしの腕を離さない。
手首が熱を帯びてジンジン痛む。
「先輩、その手離してもらえます?」
勇志くんはあたしの手を取って、
先輩に軽くお辞儀をして早足でその場を後にした。
さっき掴まれた場所が痛い。
「芽生ちゃん大丈夫?」
「うんっ・・・。ごめんねっありがとう」
「手、見して。」
あたしの手首は赤くなっていて、
男の子の力には敵わないと痛感した。
「愁待ってるんでしょ?」
そうだ、愁ちゃん待ってるよねきっと。
荷物は置きっぱなしだし、
あたしがいなかったらまた心配しちゃうかもしれない。
「俺も行って説明しようか?」
「ううんっ!愁ちゃんには言わないでくれる?また愁ちゃん心配しちゃうから。いつも心配かけてばっかりだから、お願い。」
勇志くんは少し渋った顔をしたけど、
あたしのお願いを聞いてくれた。
いつもいつも心配かけてばっかりで、
愁ちゃんには言いたくなかった。
頼ってばかりじゃいられない。
あたしは急いで教室まで走った。
「っ愁ちゃん!」
あたしの机に腕組みして腰かけている愁ちゃん。
あたしを見るなりため息をついた。
絶対待ってたんだよね・・・怒るかなぁ。
「また走った?」
そういえば、あたしまた走ったんだ。。
しかも汗だくで、愁ちゃんが帰ってきた日と全く一緒。
「うんっ。待ってると思って・・・走っちゃった♪いたっぁ~い!!」
あたしのおでこにデコピンをした。
「走んなって言ったろ?」
「・・・ごめんなさい~。」
「ほら、帰んぞ~」
あたしの荷物を肩にかけると、
先に教室を出た愁ちゃん。
もうっ!いっつも歩くの早いんだからっ!
ふふっ。
でもいつもそれに気付いてさりげなくあたしに合わせて歩いてくれるんだよね。
あたしは制服の袖を引っ張って、
赤く腫れてきた手首を隠した。
「それより、芽生さっきどこいたの?」
「あっあぁ、お腹痛くなっちゃってトイレ!」
咄嗟に出た嘘がお腹痛くてトイレなんて・・・。
汚すぎるじゃんあたしっ。
うんちしてました~って言ってるようなもんじゃんっ。涙
「愁ちゃんはさ?好きな人とか出来た事ある?」
「なんで?」
動いてた足を止めて愁ちゃんが不思議そうにあたしを見る。
だってこんなに優しくてかっこいいんだよ?
女の子にはモテるだろうし、
彼女いないのが不思議なくらいだもん。
「ん~だって愁ちゃん優しいしかっこいいし、いないのかなって!」
「好きな人いたよ。つか多分ずっと好きかも」
正直驚いた。
まさか本当にいたんだから。
「そ、そうなのっ?!どんな子?」
「ん~、可愛い子。あとアホかも。」
「なにそれっ♪アホって可哀想だよっ」
その時はまだ気付かなかったの。
愁ちゃんがどんな気持ちで話してたか。
あたしは鈍感で無神経で馬鹿でアホで、
愁ちゃんを沢山傷付けたよね。