ラストボーイ







「ふふふ、何でって顔ね?見てれば分かるわよ。自分の子だもの。」





「そうだよな。俺多分小さい時からずっとそうだったんだと思う。」





「えぇ、そうでしょうね?いつも芽生ちゃん芽生ちゃんだったから。芽生ちゃんも愁の背中を追ってたもの可愛らしかったわ。」






昔は追われてたのに、
今は俺が必死に追ってるんだもんな。





「幼馴染み・・・だったんだ最初は。でも少しずつ変わって今じゃ幼馴染みがすっげぇ嫌なんだ。」





"幼馴染み"



俺が今一番嫌いな言葉。

母さんは黙って話を聞いてくれた。
初めて話すのに、不思議と恥じらいも無かった。






「愁の気持ちはよく分かるわ。でも幼馴染みだからダメって誰がきめたの?」





「決めたっつうか、芽生にとって俺はただの幼馴染だから。」






「そうじゃないわ。幼馴染みは変えられない。それはこの先一生ね?でも・・・人として愁を必要としてくれてるじゃない。人よ?いくらでも変えられる。幼馴染みだからあなたが必要って芽生ちゃんが思う訳ないわ。」






確かに芽生に聞いた訳じゃないし、
芽生なら幼馴染みだからって理由だけで俺を必要としたりしない。








「愁の存在なのよ。愁っていう人の存在よ。」







俺の存在・・・・・。



でも俺に何が出来た?

俺は何か特別してやれてる訳でもない。



むしろ困らせて悩ませて、

好きな女をこんな風にさせてんだから。






「俺はあいつに何も出来てない。」





俺がそう言うと、
母さんは大きなため息をついた。




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