ラストボーイ
「そうね。きっと消える事はないでしょうね。それは愁だからじゃないわ。誰であっても消せないのよ。・・・肉親を目の前で失ったんだもの。」
「・・・だよな。分かってるよ。」
そんなの俺が1番分かってる。
「忘れさせるのは無理でも、なるべく思い出さない様に、芽生ちゃんを楽しい事でいっぱいにする事は出来るわ。」
「思い出させないように・・・・か。」
「そうよ。ゼロには出来ないかもしれない。けどそれに負けない今を作る事は出来る。幼馴染みの檻から出ちゃいなさい愁!」
「・・・・なんだよ檻って。」
幼馴染みの檻から・・・・・。
気にしなくていいのか?
俺は今まで幼馴染みだから、
幼馴染みだからって勝手に思い込んで、
それ以上もそれ以下もないんだと思ってた。
「・・・母さんありがと。」
ーーーーーーーーピンポーンッ
「あら今日は早いわね」
玄関が開く音がした。
親父か。今日は随分帰りが早いな。
親父はリビングに入るなり、
俺を見てキョトンとした。
「おかえり。」
「ただいま、愁がそこに座ってるなんて珍しいな。それよりメール見たよ。芽生ちゃんは大丈夫なのか?」
「えぇ、今上で眠ってるわ。」
「そうか、良かった。愁、ちゃんと見とくんだぞ?」
「あぁ。様子見てくる」
母さんは俺を見てウインクした。
自分の中にあった殻を、
今日は母さんのおかげで破れた気がする。
「ママ、随分機嫌がいいな。何かあったのか?」
「いいえ、青春っていいわねあなた。」